今回の記事はミッシェル・ジュヴェ著『睡眠と夢』の紹介です。夢に関する知識をアップデートするために購入しました。
研究が遅々として進まない睡眠と夢の領域
同書の著者も指摘していますが、夢の科学的な研究には実用的なメリットが少ないため研究資金がなかなか調達できず、そのため科学的な解明が遅々として進まないのが実情のようです。
そのためか大型書店を行っても、夢に関する書籍の大部分は解釈のようなものばかりで、その中でやっと見つけたのが今回紹介する『睡眠と夢』です。
ミッシェル・ジュヴェ氏はフランスにおいて睡眠研究をリードしてきた脳科学者で、『睡眠と夢』を読むと、ジュヴェ氏が睡眠や夢に関する数々の科学的発見に関わって来た重要人物であることが解ります。
そのため時代遅れの学説が訂正されることなく流布され続けている
またそれと同時に、これまで科学的事実もしくは有力説と信じられて来た夢に関する仮説の幾つかが、研究者の間では今日ではその妥当性が疑問視されていることを知りました。
例えば「夢は最も浅い眠りである休息眼球運動を伴うレム睡眠の時にだけ見る」「夢は記憶の整理のために見る」と言った学説です。
補足) 恥ずかしながら私も、両学説を妥当なものと信じておりました…
特に後者の学説は元を辿れば19世紀の中頃の産物であり、こうした時代遅れの認識が訂正されることもなく、そのまま科学的事実として普及し続けているのも、冒頭で述べた睡眠や夢に関する研究の停滞がその一因ではないかと考えられます。
睡眠や夢に関する比較的最近の知見が収められた数少ない翻訳本
最後に『睡眠と夢』の記述の多くは講演をベースしたものであるため、脳科学の専門知識を必要としません。
また説明のために生理学の用語が数多く出てきますが、仮にその多くを理解できなかったとしても、学説に関する大筋の理解に支障はないと思われます。
『睡眠と夢』は睡眠や夢に関する比較的最近の知見が収められた数少ない翻訳本ですので、これらの分野に関心がある方に広くお勧めしたい一冊です。