先日、とあるフォーカシングの自主グループに参加させていただきました。その際、フォーカサーの立場で体験したことについて書かせていただきます。
フォーカシングで蘇った悪夢:
先日、とあるフォーカシングの自主グループに参加させていただきました。その際、フォーカサーの立場で体験したことについて書かせていただきます。
ある気がかりについて考えながら身体に注意を向けたところ、胃の辺りにムカムカした感じがあります。次に(お腹が空いていたこともあり)お腹がドンドン凹んでいき、背中とくっつくような感じに変化しました。
「あぁ~」
その瞬間、半年前に見た思い出したくもない悪夢の記憶が蘇りました。
それは人体実験によって病院の患者さんが殺される夢でした。まだ認可されていない薬を投与された患者さんが発狂し、内臓がすべて溶けて背中の皮膚と背骨だけになって死んでいった夢です(玉木宏研修医の医療ミス@悪夢)。
クライエントさんの直面する世界との接点:
その後、インタラクティブ・フォーカシングに移行すると、ある気づきが生じました。
この時の私は、「ボーダーライン水準」の傾向を示すクライエントさんの治療の際、なかなか共感することができずに苦労していました。専門書を読むと、いろいろとクライエントさんの直面している世界の様相が描かれているのですが、いまいちピンときません。
しかし「人体実験の悪夢」を思い出したことで「ひょっとして、クライエントさんは毎日、この夢のような世界を生きているのかもしれない」と思え、少し見通しが立ちました。
帰りに、お茶をしながら読んでいた本の中に次のような一文がありました。
「(自分の命が)強大な力を持った冷徹で迫害的な『(セラピストも含めた)他者』の手に委ねられている、という患者の恐怖はあまりに強いので…」(パーソナリティ障害の診断と治療 P.88)
夢の中の研修医をセラピストに置き換えると、この文章の印象とピッタリです。
半年前に見た悪夢が、今このような形で役に立つとは思いもよりませんでした。夢の持つ力を改めて感じた次第です。
人間の能力:
ただ、疑問もあります。なぜ「人体実験の悪夢」を今ではなく半年前に見なければならなかったのか、そのメリットが判りません。何しろ夢の影響で、それまで好物だった「骨せんべい(魚の骨を油で揚げた健康食品)」が気持ち悪くて食べられなくなってしまったのですから。
また、実は私は夢の内容を誤って記憶していました。薬を投与されて患者が死んでしまう部分は当たっていますが、それは人体実験によるものではなく、不馴れな研修医の医療ミスによるものです。
したがって、夢そのものが「気づき」に役立ったとは言えない部分もあります。
このように考えると、「夢が時空を越えて作用した」というよりも、「人間は(夢も含めた)実に様々な事柄から、意味を見出す能力を持っている」…そのように思えてくるのです。
パーソナリティ障害の診断と治療
ボーダーライン・精神病水準の診断・治療のためのテキストです。トレーニング中のセラピスト向けに書かれているため、装丁から受ける印象とは異なり、内容は比較的平易です☆