ユング心理学入門/河合隼雄著 第2章「フロイトとアドラー」(P.19~27)を読む。
心的外傷(トラウマ)理論:
アンナという女性の治療中、催眠状態の中で忘れ去られていた体験について語り、抑えていた情動を発散すると、神経症の劇的な改善が見られた。
このことからフロイトは、「本来発散されるはずのエネルギーが、何らかの理由で発散の路を閉ざされた時に神経症が発症する」と考えた。
したがって、行き場を失い貯留されているエネルギーを発散させることが治療の主な目的とされ、それは浄化法(カタルシス)と呼ばれた。
これは神経症に対して、初めての実際的な治療法であった(P.19~26)。
性の理論:
その後、心的外傷理論は発見者であるフロイト本人によって捨て去られる運命にあった。なぜなら、患者から聞き出した外傷体験には、「真実でないもの」があることが分かってきたからである。
その上、一つの外傷体験を想起しても、簡単には症状が消えない場合も生じてきた。
これらのこと、特に一つの外傷体験を想起しても簡単には症状が消えないことから、フロイトは、外傷体験が
1. 単独に心の中に存在するのではなく、関連性を持った経験が複雑に絡み合っており、それは「一つの中核」を持っていること。
2. そして、この中核に迫るまでに類似の外傷体験を想起するが、中核にまで至らないとなかなか問題が解決しない。
ことを見出した(P.26~27)。
この考えは、ユングのコンプレックス理論(P.64)を想起させます。コンプレックスは「何らかの感情によって結ばれている心的内容の集まり」と定義されます。
この理論に上述のフロイトの考えを当てはめると、神経症の治癒には、「外傷体験を思い出すだけでなく、その底に流れている感情にも触れる必要がある」ことになります。
抑圧と抵抗:
フロイトによると、中核を成すものが性的な内容を持ち、その内容を認めることが患者にとって耐え難いので、それを抑圧し、意識化に対して強い抵抗が働くことが認められた(P.27)。
このことは、当時のヨーロッパの文化的背景を考慮しなければなりません。今日のように、性について比較的オープンに語られる時代には、「外傷体験=性的内容」の考えは、必ずしも当てはまらないと思います。
そして、前述の「虚偽の外傷体験」は結局、「無意識の願望による空想から発するもの」と考えた。
こうしてフロイトは、人間の性衝動を重視し、その研究に力を注ぐことになる(P.27)。
この記述からするとフロイトは、中核を感情ではなく、あくまで体験(出来事)と捉えていたようです。このことは次章の人間のタイプとも関係してきます。
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