自由連想法による自己分析・ゲシュタルト療法の夢分析への効果 目次:
夢分析の仕事に必須の自己分析
久しぶりの夢分析での心理状態の変化
自由連想法による自己分析・ゲシュタルト療法の夢分析への効果
夢分析における緊張や動揺は心理療法の練習だけでは解消できない
自由連想法による自己分析の、自己洞察の能率の良さ
ゲシュタルト療法による自己傾聴の、自己受容の能率の良さ
自由連想法による自己分析とゲシュタルト療法による自己傾聴の使い分け
夢分析の仕事に必須の自己分析:
夢分析に携わるもの、つまり夢分析家には(ベースとなる心理療法の種類に関わらず)自己分析により自らの心を内省することが求められていますが、最近この自己分析の重要性を確信する出来事に遭遇しました。
久しぶりの夢分析での心理状態の変化:
実は半年ぐらい前から対面での夢分析の予約がぱったりと途絶えてしまい、その打開策として料金を大幅に下げ空いているカフェで夢分析を始めました。
この打開策は功を奏したようで夢分析にまた予約が入るようになりました。
こうして久しぶりに対面での夢分析を行いますと、クライエントさんに相対する自分の心理状態に大きな、それも肯定的な変化が生じていることに気づかされました。
本来でしたら実践からしばらく遠ざかっていたわけですから、勘が鈍って思うようにできないことが予想されます。事実、夢分析の直前まではそのような不安を感じていました。
しかし、いざクライエントさんと向き合いますと先ほどまで感じていた不安は消え去り、夢分析の最中は自分でも不思議なほどクライエントさんの話にこれまでになく集中することができ、なおかつ動揺するようなこともありませんでした。
自由連想法による自己分析・ゲシュタルト療法の夢分析への効果:
なぜこのような不思議なことが起きたのかと探ってみますと、考えられる要因は自由連想法による自己分析だけでした。
自由連想法による自己分析は一年ほど前から定期的に行っていましたが、対面での夢分析の予約が途絶えていた期間は時間に余裕ができたためほぼ毎日、日によっては一日に二回行い、自身の無意識的な心理についての洞察がそれまでよりも飛躍的に進みました。
またその間にゲシュタルト療法というイメージ療法を使えば自分自身に傾聴(自己傾聴)することができることも発見できました。
対面での夢分析の予約が途絶えていた期間に行っていたのは自由連想法による自己分析やゲシュタルト療法による自己傾聴だけでしたので、久しぶりの夢分析における心理状態の変化に影響を与えたのはこれらの作業としか考えられません。
夢分析における緊張や動揺は心理療法の練習だけでは解消できない:
このことは夢分析の練習方法について考えさせられるものでした。
一見、夢分析で緊張や動揺が生じるのは、それぞれで用いられる心理療法の練習不足、つまりその心理療法がしっかり身についていないことが原因と思われがちですが、私の体験を考慮すれば必ずしもそうとは言えず、むしろ自己分析により自己洞察を深めた方が、夢分析での緊張や動揺の解消に遥かに効果的と思われます。
※もちろん心理療法の練習不足も緊張や動揺の原因の一つであることに違いはありません。
たとえば(やはりクライエント数減少の対策として)最近カフェで行う自己分析を新しく始めたのですが、初回は大変な緊張や不安を味わいました。これは明らかに進め方への「不慣れ」が原因と考えられます。
自由連想法による自己分析の、自己洞察の能率の良さ:
このように緊張や動揺の軽減・解消など、夢分析の実践に多大なメリットをもたらすと考えられる自己分析ですが、ではどのような方法で行っても、言葉を変えればどの心理療法を用いても同様の効果が得られるのかといえば、私の答えはノーです。
これまでの私の自己分析の実践を振り返ってみますと、その時期その時期でフォーカシング・プロセスワーク・ユング心理学のアクティブイマジネーション・(自己傾聴ではない)ゲシュタルト療法など様々な心理療法を用いて自己分析を行ってきましたが、自己洞察の能率が飛躍的に高まったのは精神分析の創始者フロイトが治療に使った自由連想法を自己分析に用いるようになってからでした。
自由連想法とは「文字通りの意味で」頭に浮かんだ言葉をすべて声に出していく心理療法ですが、自己分析の場合は話す相手がいないため、代わって頭に浮かんできた言葉をすべてノートパソコンで記録していきました。
この作業を辛抱強く40~50分も続けますと、これまで一度も考えなかったような、そして「本当に自分がこんなことを考えていたのだろうか?」と疑問に思うような思考が自己分析を行うたびに次々と現れてきました。
このような体験は他の心理療法では起こり得ないことでした。他の心理療法は高揚感を感じるようなスピリチュアルな体験をもたらしても、自分自身の理解(自己洞察)という点では満足いくものではなかったのです…
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ゲシュタルト療法による自己傾聴の、自己受容の能率の良さ:
対面での夢分析が皆無だった期間に自由連想法による自己分析とは別に、頻度は少ないですがゲシュタルト療法による自己傾聴というものも行いました。
ゲシュタルト療法とはイメージ療法の一種で、頭の中で自分自身のある性格の部分や対人関係における相手の方をイメージしそのイメージと対話する、つまり空想上の対話を使った心理療法です。
このゲシュタルト療法のテクニックを使えば、傷ついた自分のある部分に対して、いわばもう一人の自分が夢分析家のような態度で接する、言葉を変えれば夢分析を行うことが可能となります。
ここで「ゲシュタルト療法による自己傾聴」と心理療法を傾聴に限定しているのには、私がこのテクニックを発見したときの状況(心理状態)が影響しています。
それはいつものように自由連想法による自己分析を行っていたときでした。例によってこれまで考えたこともないような思考が浮かんできたのですが、このときに限っては思考のみならず感情、それもおそらくかつて体験しこれまでずっと抑圧され続けてきたと思われる非常に辛い感情が同時に蘇ってきました。
それはまるで決して触れてはならないトラウマ(心的外傷)に不用意に触れてしまったかのような恐怖を私にもたらしました。
ただし恐怖と同時に、この恐怖や苦痛を誰か一緒に抱えて欲しい・そうして支えて欲しいという気持ちもハッキリと感じられました。
そのときとっさに浮かんだのが傾聴という心理療法でした。傾聴*によって恐怖や心理的苦痛に圧倒されかかっている自分自身を支える以外に救う方法はなく、またそうしないと今にも自分が崩壊してしまいそうな不安を覚えました。
そして自分自身に対して傾聴できる心理療法はゲシュタルト療法以外に思いつきませんでした。
*クライエントの言葉のうち(クライエントにとって)重要と思われるキーフレーズや感情(実感)を伴っていると思える言葉をそのまま伝え返す(繰り返す)心理療法。
こうしてゲシュタルト療法のテクニックを使い半ば手探り状態で自分自身に対する傾聴を試みたところ、やがてこれまで体験したことのない心理状態が訪れました。それは本当の自分との出会いでした。
「本当の自分」と呼べるようなこれまでずっと心の奥底に幽閉されていた自分のあり方に出会い、そのような自分でいても大丈夫という自己受容の体験でした。
またこれはウィニコットの「本当の自己」と「偽りの自己」の概念の実体験でもありました。
このように「本当の自己」に触れるような深い自己受容が、たった一回のゲシュタルト療法による自己傾聴でもたらされたのです。
自己受容自体は自己分析により自己洞察を得ることでいずれは可能となります。しかしそれは簡単なことではありません。
私が体験した限りでは「自己洞察→自己受容」は次のようなプロセスを経て達成されるようです。
1. ある自己洞察が得られる。
2. それと同じような自己洞察が何度も繰り返される
(すでに分かりきったことが何度も出てくるため、これは非常にイライラさせられる心理状態です)
3. 自己洞察が繰り返されるのみで、何ら心理的な変化が生じないことから、ついには「もう自分は変わらない・変えられない」と諦めの境地にも似た感覚で自己受容がなされる
このように自由連想法などによる自己分析でも辛抱強く続けさえすれば、いずれは自己受容に至ると考えられますが、ゲシュタルト療法による自己傾聴に比べれば遥かに時間がかかります。
自由連想法による自己分析とゲシュタルト療法による自己傾聴の使い分け:
ここでゲシュタルト療法による自己傾聴にそれほどまでの効果があるのなら、最初からゲシュタルト療法による自己傾聴を行えば一番効果が高いように思えますが、私の経験ではそうではありません。
上述のゲシュタルト療法による自己傾聴の劇的な効果は、クライエントの立場である傷ついた自分自身のニーズ(この恐怖や苦痛を誰か一緒に抱えて欲しい・そうして支えて欲しい)を的確に汲み取って行われたからこそ得られたものであり、そうでなければ「オウム返し」のように忠実な傾聴は、単に奇妙な応答と受け取られるだけと思われます。
関連ブログ:傾聴とオウム返しとの違い-クライエント中心療法における自己治癒力
したがってゲシュタルト療法による自己傾聴は、傷ついた自分自身の傾聴を求めるニーズが感じられたときにのみ使い、それ以外のときは主に自由連想法による自己分析を行うというのが自己分析に対する私の考えです。
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