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躁的防衛の夢による自殺回避の一例

自殺衝動時の夢:

数年前ある心理的危機に直面し自殺衝動に駆られたことがあります。何とか衝動に持ちこたえて数時間眠ることができたのですが、その際に次のような夢を見ました。
冬のシベリアで遭難。このままでは凍死してしまうので場所を移動することにする。幸い湖が凍っていない。このまま反対岸まで渡りきれば町があるはずなので助かるに違いない。
湖の水は肌を突き刺すような冷たさだったが我慢してなんとか渡りきる…

躁的防衛の夢:

零度に近い冷たさの湖を泳いで渡る、しかも金づちの私が…現実ではまずあり得ない話です。したがってこの夢は、泳げないことなどの都合の悪い現実を一切無視(否認)し、空想上の万能感で満たされた、躁的防衛の色合いが強い夢となっています。

躁的防衛とは:

躁的防衛とは心理的な危機に対処するための心の働き(精神分析理論における防衛機制)の一つで、物事の中の自分にとって都合の良い面だけに目を向け、都合の悪い面はすべて無視(否認)することによって、あたかもそれを限りなく価値があるものと思い込む無意識の心の作用をさします。
ことわざの「隣の芝生は青く見える」の心理にもこの躁的防衛が働いていると考えられます。

躁的防衛の夢による自殺回避:

このように躁的防衛という非常に原始的な防衛機制に彩られた夢ですが、このときの私には非常にありがたく感じられました。なぜなら夢から覚めた直後に「(夢の中でとはいえ)金づちの私が冬の湖を渡りきることができたのだから、きっと何とかなる」と思え、急に希望が湧いてきて自殺を回避できたためです。
一般的に躁的防衛は多用されると現実認知を極度に歪めかねない防衛機制ですが、今回の自殺衝動のような深刻な精神的危機に見舞われた場合には、むしろ危機を回避し心の大きな支えとなる力を秘めているようです。

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