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夢診断・夢分析の洞察における否認

夢診断・夢分析の洞察における否認の可能性:

夢診断や夢分析における洞察(自分自身に関わる重要な気づき)は問題解決や苦痛な症状の解消などをもたらすことがあるため夢診断や夢分析ではもちろんのこと、すべての心理療法においても重要視されています。
しかし大変残念なことですが、夢診断や夢分析から得られた洞察が夢を見た方(以下、夢見手と略)にとって肯定的で喜びに満ちた内容の場合、しばしばその洞察は洞察というよりも否認と呼ばれる心の働きの現れである可能性があります。

否認とは?

否認とは精神分析における防衛機制の一つで、物事の中の「都合の悪い部分をすべて無視」することで「自分にとって都合良く解釈する」心の働きです。
ストレス発散も「嫌な出来事を一時的に無視する」ために行われる点では、広い意味で否認と言えないこともありません。

苦痛な洞察を避けるための否認:

夢診断や夢分析では心の内面、ときには無意識の深層心理が明るみになる可能性がありますが、その内容が無理に抑圧されていたようなものである場合は苦痛を伴うこともあります。
そして、そのときの夢見手に苦痛に耐える精神力が備わっていれば、抑圧されていた体験を思い出し、あるいは意識されることなく夢見手に影響を与えていた無意識の信念に気づくことができるようになります。これが本来の洞察です。
一方、もしそのときの夢見手に苦痛に耐える精神力が備わっていない場合は、何も頭に浮かんでこないか、あるいは意識されても耐えられるような別の内容が浮かんできます。この別の内容が浮かんでくる際に冒頭で述べた否認のプロセスが働いている場合があります。

苦痛な洞察を避けるための否認の一例:

私事で恐縮ですが、夢分析の洞察に潜む否認の実例を挙げます。もう10年以上前の話ですが、一時期自分が何を仕事にしたいのか分からなくなったときがありました。そこで当時通っていた夢分析のセミナーで夢を通じてその答えを見つけようと思いいたりました。しかし数カ月たっても答えは見つかりません…
そしてどんどんイライラが募っていったとき次のような夢を見ました。
何かのお祝いなのか親戚中が集まっている。父がぽつりと「パソコンの仕事が向いているんじゃないか」
ずいぶん都合の良い夢だとも思いましたが、これが答えのような気がしてなりませんでした。これには次のような理由がありました。
まず第一にこれが「嫌いな人の発言」であることです。夢では嫌いな人の発言の方が重要なメッセージであることが多いと教わりましたので夢の中の父の発言には信憑性があるように思えました。
第二に現実の父が夢と同じようなことを言っていました。したがってそのときの父の提案をまったく無視したことに対して夢が「大切なこと」だと再び持ち出したように思えました。
当時はその夢の答えが真実のように思えましたしカウンセラーの方にも喜んでいただけましたので、パソコンを使ってデザインをするグラフィックデザインの仕事に就きました。しかし現実は厳しく、中でも一番ショックだったのは自分のデザイン力の低さです。そしてデザイン力はいくら努力してもさして向上することはありませんでした。
何年も経ってから気づいたことですが、私はわざわざ不向きともいえる仕事を選んでしまったのでした…

洞察に対する自己分析(自己評価)の必要性:

当時の私に少しでもデザインの仕事に対する自己分析(自己評価)ができていたら、このような失敗は防げていた気がします。
しかし当時の私は、人気の職種の上に未経験、しかも特にデザインの仕事が好きという訳でもない者が幼い頃から絵が好きで美大や美術系専門学校で専門教育を受けた方と同じように仕事ができようになることの困難さを、頭では何となく分かっていてもそのことをまったく重要視していませんでした。
今振り返ってみますと、このときの私の心の中ではデザインの仕事に対する自分の不利な面がすべて否認されていたように思えてなりません。
このときのデザインの仕事に対して「良い経験になった」と思うこともできるでしょうが、実際はどのような仕事でも何らかの経験は得られます。むしろ「良い経験になった」と納得する気持ちの背後には本当は落ち込んでいる気持ちを否認する心理が働いているように思えます。

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