『カール・ロジャーズ入門』を読んでいて、次の一節に釘付けになりました。
ロジャーズの非指示的アプローチは次の三段階で構成されていました。
(1)表現の解放~「ええ」「はい」といった「簡単な受容」やクライエントが語ったことの(内容にでなく)感情的な要素を繰り返す「感情の反射」を行う。
(2)洞察の達成~クライエントが自分自身を受け入れ、自分の感情や自分に関わる事実をハッキリと認識できるようになると、バラバラだった事実と感情とを結び付け始める。
(3)洞察から生まれる肯定的な行動~クライエントが自分の感情や行動について洞察を得ると、そこから意味のある行動の変化が生まれる。(P.73)
カウンセラーの提案による洞察:
特に、最後の「意味のある行動の変化」の部分です。
ドリームカウンセラーのトレーニングを受けていた頃に感じたことがあります。カウンセラーの(指示ではなく、あくまで)提案に沿ってカウンセリングが進んで行くのですが、最後に何がしかの洞察があっても、残念ながらそこから意味のある行動の変化に繋がることは、ほとんどありませんでした。
そして、そのことが不思議でなりませんでした。「あの時の体験はウソだったのか!?」と。
逆にカウンセラー役をしている時には、次々と提案して行く中で、「自分がカウンセリングをリードしている。」ように思え、それはとても気分の良いものでした。
もちろん「提案」は強制ではありませんので、クライエントにはそれを断る自由があります。しかし実際は、クライエント役をしていてカウンセラー役の提案を断ることはほとんで不可能でした!
当時は、これは自分の個人的な問題で、「自我が弱いがために抵抗が働く」のだと思っていました。しかし、上述のロジャーズの理論に触れると、理由はそれだけではないと思えてきます。
ランクの影響:
カウンセラーとクライエントとの間には、暗黙に「専門家」と「そうではない人」というランク*の違いが存在します。カウンセラーとクライエントとは、最初から対等ではないのです!
このことも、(ランクが上の)カウンセラーの提案をクライエントが断るのを難しくさせているのでしょう。
*ランク
対人関係に於いて(無意識のうちに)形成される、目に見えない上下関係。
「偽りの洞察」の可能性:
そのような時、(満足気なカウンセラーを前にして)クライエントの中に「カウンセラーの気分を害したくない」「その場の雰囲気を壊したくない」などの気持ちが無意識に働き(偽りとは言わないまでも)極めて表面的な洞察が形成されるのかも知れません。
私のクライエント役の経験では、ついついカウンセラーに気を使って、思ってもいないことに同意してしまったことが幾度となくありました。
そのような時の私は、多少当惑しながら「ええ、まあ」「そう…ですね」と歯切れの悪い答え方をしていました。
一方、カウンセラー役の時は、クライエントが取りあえず同意してくれたのを見てホッと胸を撫で下ろしたのを覚えています。
ここまで来ると、「一体、誰のためのカウンセリング?」ですよねw
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紛争の心理学―融合の炎のワーク
第3章にランクに関する考察があります。著者はプロセス指向心理学の創始者、アーノルド ミンデル。
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